極道坂

 また雪である。

 弊社は極めて短い坂道の途中に鎮座している。文字を縮めると「極道」。70年代フォーク風に言うと、坂道の途中にある小さな喫茶店、というか会社である。

 なんだかこの坂道には呼び名があり、それはそれで古くからの由来があるようなのだが、きょうび我々はこれをライノ坂と呼ぶ。勝手にそう呼んでいる。

 そういえばこのオフィスに引っ越した時、このビルの名前をどう呼ぶか議論になった。3階建ての小さなビルだが、まるごと一棟借りたのとそれまでそもそもビル名がなく、専門学校だったので自由に名づけていいことになった。いいアイデアがなかったので冗談で「ライノタワー」でいいじゃんなんてふざけてたら、誰かスタッフがそれを鵜呑みにし、メールか何かにその呼び名をつけて各方面へ連絡してしまった。

 いまだに一部の郵便が「ライノタワー」で来る。

 いっそのこと「ライノコンツェルン」くらいにしてくれ。

 そのライノ坂であるが、いまうちの海山がトレッドつるつるのK4自動車を動かそうと格闘している。14万キロ走ってタイヤが擦り切れ、スタンドに行くたびにスタッフが懇願するようにタイヤ交換を勧めるクルマである。

 それをこの雪の日に。

 なにがやりたいのだろう。

 なにか新しいウインタースポーツなのか?

 いまひとつわからない。

 タイヤがすべって進まないので、いま雪かきやってる。どうやら本気のようだ。

 人様に迷惑をかけないことを祈るばかりである。

 代官山在勤で渋谷駅への近道でここを使っている人はこの後、この坂は雪で凍るので充分気をつけて通行してください。

 海山の告別式はまた別の機会に案内します。