沈黙

 遠藤周作の「沈黙」をマーティン・スコセッシが映画化したというので、これは観ずにはおれんということで昨日六本木TOHOシネマズへ。

 いつもとは違う空気感が漂っている。休日の映画館にそぐわないイカつい成りをした男どもがそこここに。誰かVIPでも来るのかなあなんて話していたら、安倍首相が現れた。ちょうど通路に面した席だったので1メーターも離れないところを通過。仕立てのいいカジュアルなキャメル色のコートを着て颯爽と。しかしそれにしてもオーラがない。そんなことを話していると、隣に座っていた親子づれのお母さんも相槌を打ってくれてしばし話しをしてしまった。

 島原の乱の後が物語の舞台。キリシタン弾圧を強める施政者の姿をみて、首相はどんなことを考えたのか? 

 あの頃に比べ日本はずいぶんマシな国になったけれど、この数年で格差問題はさらに悪化している。

 映画は原作にほぼ忠実。この物語の最重要人物のひとり、キチジローの窪塚くんの存在感があまりなかったのが残念だったのと、ロケ地がどうも日本ではなく里山の風景に違和感があったのも惜しかった。

 しかし小説だけでは得られないリアリティという面では映像は圧倒的だなと素直に感心する。アダム・ドライバーはどうにも変な顔をしているが、いい役者だなあ。

 最近、実は読み返した小説であるが、またさらに読み返そうと思った。